2017年度 連続講座 第4回
足元には何が生えてた?道具と素材のレクチャー
開催日時2018年1月21日
場所登呂遺跡公園

石器から鉄器へ。弥生の道具に思いを馳せる。

これまでの講座で、弥生の人たちがなぜこの場所に住んだかを、少しずつひもといてきました。実際に歩き、ジオラマで地形を俯瞰して見えてきたのは、登呂がとても豊かな場所だったこと。家を造る素材が身近にあり、目の前に米を作る土壌があった。それを受けての4回目は「足元には何が生えてた?道具と素材のレクチャー」。数々の出土品から推測し、どんな道具で暮らしていたのかを考えてみます。
講師は、静岡大学の篠原和大教授と、山梨で縄文暮らしをする元宮大工・雨宮国広さんです。登呂遺跡公園で焚火を囲む、座談会スタイルになりました。

まず篠原先生の、登呂の出土品についての話から。登呂では、木の農具や土器、石斧などが多数出土しています。
雨宮さんが「当時の人たちは、自然と向き合うから、木の特性をよく知っていた」というように、丸木弓はイヌマキ、鍬鋤類は硬いアカガシと言ったように、割れやすい、軽い、粘りがある、といった違いを強度や用途によって使い分けていたそう。
鉄器は出土していないものの、おそらく使っていたのでは、と篠原先生。

建築用木材や皿などの容器、ほか木製の器具類はその素材は圧倒的にスギが多く、その他にもヒノキやマツ、一部クリなども見つかっています。

本原 令子

「歩いてみるまでは、遠くから運んできたと思っていたけど、森林跡を見てスギも近くにあったと分かった」

家があり田があった=家を造り、耕す道具があったということ。そして、それが出土しているということは、木を加工する技術があったということ。ひとつの例として篠原先生が挙げたのが「スコップ」。出土しているものは、今とほとんど同じ形(!)です。

2017年5月に登呂博物館で行われた企画展「石の刃物 鉄の刃物」の関連講演会「石の刃先 鉄の刃先」で講師の先生が持ってきていた石斧があまりに美しく、本原さんがその制作者を探してたどり着いたのが雨宮さん。元は宮大工として活躍するも、その後、自然に寄り添う暮らしを求めて機械の道具を手放し、鉄器へ。そして今は石器を作り、使う縄文の暮らしをしています。

「人間とは何だろう? 昔と今で、人間って何か変わりましたか?」と雨宮さんは問います。1万年以上続いた縄文時代と同様、石器の暮らしをしてみて雨宮さんが思うのは「縄文人は鉄の作り方も稲作も知っていて、あえて使わなかったのでは」ということ。
「それが争いの元になると分かっていたと思うんです」
その理由は「人は手にする道具によって気持ちが変わるから」。

チェーンソーを持てば簡単に、思い通りに巨木を切り倒せる。競争が生まれる。
鉄器を持つと、自分は何でもできる!と思う。
石器は、木に対して「切らせてください。お願いします」という気持ちになる。
「石器でも巨木を切れる。でもそれには木と向き合い、繊維の向きなども知り尽くした上で、時間をかけなければならない」(雨宮さん)
木を切ることは命を切ること。それを縄文の人たちは知っていたのでしょう。
「ただの石ころだと思っていたものが、石斧を使うことによって、これこそがこれからの社会を豊かにできるものだと気付いた」と雨宮さん。
そして「便利さや速さを求めすぎることに、歯止めをかけるのが人間性では」
縄文暮らし半年の雨宮さんの話は「人間の生活に本当に必要なもの」についても及びました。

後半は実際に、雨宮さんが作った石器や石斧を参加者全員で使わせてもらいました。
美しいフォルムの石器は鋭く磨かれ、柄には木の枝分かれしている部分を利用されています。この部分は割れにくいのだそう。石を止めた縄は水につけることで締まり、石が抜けにくくなるという工夫も。これ一つで木も削れるし、丸太も割れることを、雨宮さんが実演。

どんな木があったかは、土の中に残っている花粉からも分かるそうです。
「花粉は硬いので、土にまとまった量が残っていればどんな木があったか分かります。登呂では栗の木が管理されていたはず。くるみは川添いに多いので、川に流されて下流に運ばれ、そのまま食べたのかもしれないですね」(篠原先生)

20代学生「最初は言っていることがよく分からなかったけれど、機械で作業すると、木の命を奪っている感覚がなくなる、という話には共感できた。男は旅をして集落ごとに受け入れられていく、という話もその通りだな!と」

40代男性「煙でいい感じにいぶされた」

20代女性「チェーンソーと鉄で気持ちが違うというのは、物に接する時間も違うから?思考が奪われているのかも」

40代女性「石の道具で家を造るというのが想像つかなかったけれど、実際に石斧で木を削っている音がとてもステキで、それを聞いていた当時の生活はとてもステキだったのかもしれない」

最後に、仕事をしていく中で体を使って感じる自然的なリズム、その強弱や規則性、そこから生じる歌や踊りを「カルチャーリズム」と呼んでいます、と雨宮さん。「みなさん、幸せですか?」のかけ声を合図に、参加者で「幸せなら手をたたこう」を歌い、4回講座が終わりました。

(ライター:永野香里)